アルマンディン  almandine Fe3Al2(SiO4)3  [戻る

等軸晶系 等方体。n=1.830前後

色:淡紅色。

へき開:認められない。

双晶:認められない。

累帯構造:広域変成岩ではパイロープ成分やスペサルティン成分を固溶し,累帯構造をなすこともあり,アルマンディン成分に富む部分は赤みを帯びる。

産状

白雲母片岩・珪質片岩・角閃石片岩・青色片岩などの結晶片岩類,エクロジャイト,片麻岩,グラニュライトなどの広域変成岩に多く,結晶片岩や片麻岩では斑状変晶をなすことが多い。白雲母片岩・珪質片岩などの低変成度のものは著量のMn2+を含む傾向があり(スペサルティン成分の固溶),エクロジャイトやグラニュライト中のものは著量のMgを含む場合が多い(パイロープ成分の固溶)。このような広域変成岩中のものは角閃石・輝石類・石英・雲母類などの塵状包有物を多く包有することが多い。

火成岩は変成岩ほどざくろ石が含むことはないが,パーアルミナスな組成の火成岩(片麻岩地域の花こう岩や,泥質岩を捕獲してその成分が混ざった安山岩)には副成分的に含まれる。その花こう岩は白雲母(なお,白雲母がマグマから晶出する可能性は低い)を伴う場合が多く,安山岩は菫青石・ケイ線石などの他の高アルミニウム鉱物を伴う傾向がある。なお,ペグマタイトにはしばしば多産し,それは著量のMn2+を含むこともある(スペサルティン成分に富むアルマンディン)。




結晶片岩(青色片岩)中のアルマンディン 
Alm:アルマンディン,Ghp:藍閃石,Ep:緑れん石

結晶片岩中のものは時に累帯構造が発達し,それは平行ニコルでの色の違いでわかることもある。上写真のものは結晶中心部(桃紅。変成作用初期の晶出部)ではMgに乏しくアルマンディン90%・スペサルティン10%・パイロープ0%程度の組成を示すが,結晶外周部(淡桃紅。変成作用後期の晶出部)ではMgに富みアルマンディン70%・スペサルティン0%・パイロープ30%程度の組成を示す。これは一連の変成作用の過程で後期に圧力が高くなり(原岩の海洋プレートの玄武岩の沈み込みが深くなる),ざくろ石のMgが増加していった累進変成作用の現れである。また,結晶片岩中のざくろ石にはこのように無数の変成鉱物の微粒子が包有され,その配列はこのようにしばしばS字型で,ざくろ石が回転しながら成長していったことを示す。
ざくろ石の周囲の灰青色部(Ghp)は藍閃石で,藍閃石中の屈折率の高い粒〜柱状鉱物は緑れん石。なお,この緑れん石はざくろ石の結晶の中心部には包有されず,外周部だけに包有されている。これはこの緑れん石がざくろ石の中心部(アルマンディン90%・スペサルティン10%・パイロープ0%)とは非平衡の組合せであることを示す。おそらく,変成作用の初期にはfO2が低く緑れん石(Fe3+が主成分)はできずアルマンディン端成分(Fe2+が主成分)に近いざくろ石が成長し,変成作用の後期にはfO2が高まり変成流体中のFe3+/Fe2+が上がり緑れん石ができるとともにざくろ石のFe2+量が低下したのだろう。ざくろ石中のFe2+/Mgの値は温度・圧力以外にfO2も影響している。





エクロジャイト中のアルマンディン 
Alm:アルマンディン,Di:透輝石,Ep:緑れん石,Amp:角閃石
エクロジャイト中のものは結晶片岩中のものよりも自形性が低く,不規則粒状で,これは原子配列がやや密な単斜輝石(主に透輝石)と密接するからである。偏光顕微鏡下では累帯構造は認められないことが多いが,しばしばこのように平行ニコルでの色の違いで認められることがある。上画像のものは結晶中心部(変成作用初期の晶出部)ではややMgに富み淡紅色だが(アルマンディン成分約50%,パイロープ成分約35%,グロッシュラー成分約15%),結晶外周部(変成作用後期の晶出部)ではFeに富み赤みが濃い(アルマンディン成分約80%,パイロープ成分約5%,グロッシュラー成分約15%)。これは一連の変成作用の過程で後期に変成度が下がったためで,変成作用の温度・圧力の変化を示す。
なお,エクロジャイト中の透輝石はこのように後退変成作用で部分的に角閃石(明らかな緑色で,透輝石よりも屈折率が低い)に変質している場合が多い。この画像の黒い部分は主にチタン鉄鉱。




肉眼で見たエクロジャイト
ややマグネシウムを含むアルマンディン(赤)と透輝石(緑)が主要構成鉱物。


片麻岩中のアルマンディン 
Alm:アルマンディン,Qz:石英,Ms:白雲母,Bt:黒雲母,Grp:石墨
片麻岩中のアルマンディンにも結晶中の包有物がよく見られる。しかし,全体的に結晶片岩中のものほど包有物は多くない。なお,この画像のような白雲母+アルマンディンの鉱物組み合わせは,黒雲母+ケイ線石+石英の鉱物組み合わせよりも,やや低温側で安定といわれている。




花こう岩中のアルマンディン 
Alm:アルマンディン,Qz:石英,Ms:白雲母,Kf:アルカリ長石
パーアルミナスな組成の花こう岩はしばしば片麻岩地域に分布し,その中のアルマンディンはこのように白雲母と共生することが多く,その花こう岩自体はマグマの固結物か否か不明である。この画像のアルマンディンは著量のMn2+を含み,スペサルティン成分が30%に及ぶ。